午前中、母の車椅子を押して近くのクリニックに向かう途中、道ばたでスズメが死にそうになっているのが目に入った。まだピクピクしていたので自転車か車にはねられた直後だったのかもしれない。
ああ、かわいそうにと思いながら、咄嗟にどうしていいか判断がつかず、そのまま通り過ぎてしまった。あとになって、後続車に引かれないよう端っこに寄せてやることぐらいできたんじゃないかと悔いた。
帰るときにまだそのまま放置されていたら持ち帰って庭に埋めてやろうと思ったけど、そのときにはもうスズメの姿はなかった。だれか心優しい人に見つけてもらったに違いない。ホッとしたのと同時に、私はしょせんその程度の人間なんだと思った。
家路を急ぎながら、溝に車椅子の車輪がハマらないよう道路の中央寄りを歩いていたら、後ろからブーブーとクラクションを鳴らされた。
振り返ると、運転手は初老の男性で、助手席の奥さんらしき人が申しわけなさそうに頭を下げていた。結局、信号のところで私たちに追い抜かされて急いだ意味がないよ。
せっかちなこの男性もいずれは自分が車椅子のお世話になることだろう。
そして、私はきょうのスズメのように道ばたで倒れて見知らぬだれかに助けを求めるのかもしれない。
人生なんてそんなもの。自分がやったことは自分に返ってくる。
おのれの私利私欲のために人を殺めている連中も同じこと。
多くの時間とお金をかけて不老不死を追求したところで、いまだに寿命は凡人とそう変わらないじゃないか。
田舎で細々と農業をやりながら年金だけで暮らしているお年寄りがあっさり100歳を超えて元気に過ごしているというのに、ほんと笑っちゃうよね。